46回目の呼吸

乃木坂46と刀ミュが好きな人

のぎおくんのバレンタイン・sideみなみちゃん(乃木坂妄想バレンタイン虹SS)

 

 

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「はい」

ずいっと差し出された小さな箱。

みなみちゃんから渡されたその箱は、恐らく何なのかは予測が付いていた。だがまさかと思い、

「みなみちゃん、これは誰に渡すの?」

てっきり僕は誰かに渡して欲しい、そう言われているのかと思っていた。だって、みなみちゃんが僕にバレンタインチョコなんて有り得ないから。

「…え?なにそれ有り得ない」

みなみちゃんは全く信じられないと言った顔で僕を見ていた。

「????」

「みなみ、すんごく頑張って作ったんだよ?ひどくない?」

「え?だって、これ…」

みなみちゃんは段々とふくれ顔になっていく。

ふくれ顔になってもみなみちゃんはかわいい。

「みなみ、初めてだったけどこれはのぎおくんにあげる為に作ったんだよ。頑張って作ったんだよ」

ピンクのリボンに小さな花のコラージュが施されたそれは、花のコラージュが微かに歪な感じが、手作りなんだと言っていた。

リボンも心なしか、何回か結び直した形跡らしき癖が付いている。間違いなくこれはみなみちゃんの手作りバレンタインチョコレートだ。

僕は今まで一度だって女の子からチョコを貰ったことはなかった。厳密には母親から貰った事しかない。だから余計、これが僕に向けられた異性からの好意を表すプレゼントだなんて事は想起できず、みなみちゃんのその言葉を上手く飲み込めなかった。

「のぎおくんひどいよ」

僕は慌てた。ほんとはとってもとってもとっても、みなみちゃんからチョコレートが欲しかったから。

だけど僕なんかにみなみちゃんがチョコなんて考える訳が無いって。僕には夢だったから。

好意を詰めた箱をおずおずと引っ込めていくみなみちゃん。僕はその手を、思わず握りしめた。

硬直するみなみちゃん。

「ぼ、ぼ、僕がもらっうっっ!!!」

「…ほんと?」

あまりに咄嗟のことで声が裏返った。

だけどそんな僕を笑わないで、みなみちゃんはまだ咲きかけの花々が、満開になった様にはにかんでいた。

その笑顔がすごくかわいくて、心臓がバク転しそうになる。恥ずかしくて仕方なかったけど、握りしめたみなみちゃんの手が若干震えていたのがその時初めて分かった。

「ほんとに?ほんとに食べてくれる?」

「う、うんっ」

すると、はにゃっとした笑顔になるみなみちゃん。

僕はみなみちゃんのことが好きだけど、そんなことを考えてはいけないと堪えることでいっぱいいっぱいだった。

その時分かった。

どうしても明るく振る舞えないし人前に立つことも得意じゃなくて、誰かに話し掛けられたら同意することが精一杯だった。

友達がいない訳じゃない、だけどそれが友達と言い切れるかと言えば僕は分からない。

そしてそんな僕を、みなみちゃんはいつもあったかい気持ちにしてくれた。

自信とか元気とか、そんな気持ち。

そんなみなみちゃんが僕に、最大級のプレゼントをくれた。しかも僕が今まで手に入れることが出来なかった、誰か一人からの好意。

我に帰ると何もかもが恥ずかしくて慌ててみなみちゃんの手を離すと、みなみちゃんがぐいっと僕の胸にその箱を押し付けた。

一呼吸置くと、

「ホワイトデーのお返し待ってるね、のぎおくん!」

それだけ言って、去り際にニコッと笑い走ってどこかに行ってしまった。

1人取り残された僕。

話すようになったのはつい最近のこと。

でも僕はそれよりも前からみなみちゃんのことを知っていた。

みなみちゃんはどうなんだろう。

まだ全然話したことは無いけれど、今日僕はみなみちゃんと今まで以上に近づけた気がした。

気がした、ではなく、近づけた。

それだけでも堪らなく嬉しくて仕方ないのに初めて貰ったバレンタインのチョコレート。

ほろ苦くてでも染み込むように甘い。

ほろ苦さの中に隠された沢山の甘さ。

僕は思わず泣きそうになったけれど、その箱を抱きしめて、みなみちゃんが走り去った方をずっと見ていた。

 

 

 

 

 

みなみちゃんとのぎおくんの二次夢小説。

次はあしゅか生駒ちゃん。

昨日書き出して寝落ちし、やっと完成しました。